「米だけの酒」とは?
山崎合資会社 山崎厚夫

平成11年10月25日
中日本醸造新聞掲載


 最近、灘の清酒メーカーから相次いで「米だけの酒」なるものが発売され、盛んに広告宣伝している。一見、本物志向の商品に見えるが、なぜ「純米酒」(じゅんまいしゅ)と呼ばないのか考えてみたい。

 そもそも、清酒のランク付けは平成元年の3月までは、級別によって定められていた。すなわち「特級酒」「1級酒」は高級酒、「2級酒」は一般酒と言った具合だ。ではその審査方法はと言えば、きき酒による官能審査だ。官庁と民間とで酒の味に詳しい審査員を数十名選び、番号のついた大き目のお猪口の酒を順番に味見して行き、合否を審査したのだ。その頃は、どこの清酒メーカーも審査にパスするような酒を競って造っていた。

 ところが、色々な物事の規制緩和が行われる中で平成元年の4月に清酒の級別が廃止された。その代わりに、新しく清酒の製法品質基準が法律で定められた。その中でいわゆる高級酒は「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」の3種類に分類し、それに当てはまらないものは名無しの「普通酒」と呼ぶことになった。

 前置きが大変長くなったが、「純米酒」を例にその製法品質の基準を説明したい。

・原料は米、米こうじ及び水。(米は検査合格品に限る)

・精米歩合は、70%以下。(玄米を100%とする)

・香味及び色沢が良好なもの。(香りも味もよく、色は黄色くなくつやがある)

 それでは「米だけの酒」はどんな酒だろうか。あるメーカーの酒は精米歩合73%と表示してあるから本来は糠(ぬか)として捨てる3%を酒の原料として使用したのだろう。米はどんな品質の物を使用しているのだろう。価格は非常に安く売られているのだが。

 とにかく法制化された「純米酒」などの高級酒が清酒全体の25%に過ぎず「米だけの酒」を初めとする名無しの「普通酒」ばかりが売られるのは非常に残念だ。この頃「清酒は安くなったがまずくなった」と言われるのはこの名無しの普通酒が原因ではないか。清酒の品質を語る時はぜひ「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」の表示の付いた酒を飲んでやって頂きたい。きっと感動の逸品が見つかるはずだ。


戻る